第14回2014年10月8日
カビで救急車搬送、劣化が進む仮設住宅
プレハブ仮設住宅の環境は歳月を追うごとに劣化の一途をたどり、入居者を心身ともに追い詰めています。
石巻市では、大量に発生したカビで呼吸困難に陥り救急車で運ばれた住民がいました。建物の傾き、土台の腐食、床のきしみを訴える声もあちらこちらから上がります。
「NPO法人石巻復興支援ネットワーク(やっぺす)」で清掃ボランティアに取り組む渡部慶太さん(同法人理事)は「畳をはがすと水滴が大量に溜まっている。網戸が外せないので埃がたまり、ドアが閉めづらいので換気が難しい」と言います。
同法人代表の兼子佳恵さんは、プレハブ仮設住宅の居住性に格差があることを指摘します。「早期建設が優先されたとはいえ、どのメーカーもこれまでの災害から入居期間の延長を想定できたはず。基準通りの施行であっても、ある団地はトラブル続きで、別の団地は3年経っても問題が少ないと聞いています」。
なかには「この仮設に住んで良かったと思える数年間にしたい」といち早く仮設への入居を決めた人がいます。よもや自分の住む場所が数年後にはカビだらけになりビニールテープで仮補修するようになるとは思っていなかったことでしょう。
さらに石巻市や女川町では、復興公営住宅の完成と合わせて仮設住宅の空室が増えると予測し、集約化の検討を始めました。「以前も集約化の話が出たけれど、話し合いで解決したと聞いた。住民は、つど情報に振り回されて不安になる」と兼子さんは、3年を経過して一層不安定になっている住民の心理状態を心配します。
4畳半2間に大人が3人で暮らすような生活がいつまで続くのか。「私たちは早く日常を取り戻したいだけなんですけどね」と話してくれました。
▲真っ黒なカビがはびこるキッチンの天井部。提供:NPO法人石巻復興支援ネットワーク(やっぺす)
▲石巻復興支援ネットワークの兼子佳恵さんと渡部慶太さん。
▲石巻の市街地では復興公営住宅の建設が進むが計画戸数3,250戸(半島部を除く)のうち入居できているのは149戸にすぎません。