2020年12月29日
日本学術会議新会員候補任命拒否に対する声明
三重県生活協同組合連合会
会長理事 上野 達彦
日本学術会議は、戦前の苦い歴史の反省から、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」(日本学術会議法前文)ことを使命として設立されました。
科学の向上と発達を図り、行政や産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的に、科学を行政に反映させる方策等を政府に勧告する役割も期待され、内閣総理大臣所轄の下、政府から「独立して」職務を行う特別の機関として機能しています。
その後、会員の選出方法について法改正が行われ、会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命するとの方法となりましたが、政府はここでの推薦は内閣総理大臣の任命に対して強い拘束力を持つものであり、内閣総理大臣が行うのは形式的な任命であると繰り返し説明をしてきました。
「日本学術会議法」は第3条に「独立して」と政府からの独立性をうたい、第7条で会員は日本学術会議の「推薦に基づいて」と内閣総理大臣の任命権を制約しています。この独立性と任命権の制約は、戦前戦中の国家による学問思想統制に対する反省に立ったものです。
今回の任命拒否について、政府は日本学術会議法第7条2項に「内閣総理大臣が任命する」となっていることを根拠に任命拒否が可能だとしています。然しながら、日本学術会議が会員候補者を内閣総理大臣に推薦する基準は、「優れた研究又は業績がある科学者」であり、内閣総理府大臣による該当しないとの判断による任命拒否は想定できず、内閣総理大臣の任命権は形式的なものだと考えられます。このことは、政府がこれまで国会で答弁されてきたことと合致します。
今回の任命拒否は、基本的人権の尊重に反することであり、これまでの法律解釈を政府が一方的に変更するものです。恣意的な法律解釈の変更は、民主主義を危機に陥れるものであり見過ごすことはできません。
菅首相は「総合的、俯瞰的な活動を求める観点から判断した」などと述べるにとどまっており、任命を拒否した理由についての説明も不十分です。また、任命拒否を決めたプロセスについても明らかにすべきです。憶測も含めた議論がなされているのは、政府による説明責任が果たされていない結果です。民主主義と立憲主義を壊すような行為に抗議し、その経緯の十分な説明を求めます。
以上