販路喪失と風評被害からの回復をめざして
宮城は日本有数の水産県で、大型漁港に水揚げされるマグロやカツオ、サンマをはじめ、浜ごとに養殖されるカキ、銀ザケ、ワカメなど多種多様な水産物を国内外に送り出しています。
大震災の発生から3年半。漁船や養殖施設の復旧に伴い、水産物の生産量は少しずつ回復しています。近海カツオ・マグロなどの水揚げは6~7割、養殖の銀ザケは約8割、ワカメは震災前の水準を超えました。ことしの初夏には、生育に3年かかるホヤが震災後初めて収穫されています。カキの生産量減少や価格低迷、復旧工事の遅れなど厳しい状況は変わらず続いていますが、海は徐々にかつての豊かさを取り戻しつつあります。
しかし最大の課題は、その水産物の販路をどう確保していくかです。「震災で宮城の水産物供給がストップしている間に、他の産地の物に取って代わられてしまった」。宮城県漁協の丹野一雄会長は、販路がなかなか回復しない現状を話してくれました。
追い打ちをかけたのが、放射性物質飛散事故でした。「特に関東以南は不安視する販売店が多く、取引を拒まれました」。宮城の水産業は、震災で多大な打撃を受けただけでなく、風評被害という負荷も背負うことになったのです。放射性物質検査で基準を超える水産物は一切流通させていないにも関わらず、「風評」はいまも続いており、「県や国の協力を得ながら解消していくしかない」のが現状です。
一方、そこで踏みとどまるよりも「これまで以上に販売力を強化していきたい」というのが丹野会長の考えです。宮城の水産物をPRするため、関西でも販売促進のイベントを予定しています。「震災だから協力してほしいという時期は過ぎた。宮城の水産物は美味しいので買ってほしい、と自信を持ってお奨めしていきます」。
▲「生協さんをはじめ関係機関と一緒に販売活動に取り組んでいきたい」と話す丹野一雄さん(宮城県漁協経営管理委員会会長)
▲ことし5月に岸壁の復旧工事が終わった気仙沼魚市場。2013年の水揚量は震災前の66%にとどまる。